コミュニティマーケティングとは?

元AWS(アマゾンウェブサービス)の小島英揮氏が主宰するCMC Meetupの第8回をレポートする。

CMCとは、Community Marketing Community の略称。ネットとスマートフォン、ソーシャルメディアの普及により、マスを主軸にした既存のマーケティングに限界が見えている。対象を明確にせず、雨のように情報を降らせるマスマーケティングは、身近なコミュニティからの情報を注視している顧客には響かなくなっている。

ネット、スマートフォン、ソーシャルメディアでのポイントは、どれだけ情報を「自分ゴト化」できるかということだ。テレビに取材されればサーバーが落ちるほどサイトへのアクセスが来るように、マスマーケティングはリーチという点ではまだまだ強い。しかしながら、CMのような短時間の情報露出では、自分ゴト化しにくい。リーチしても自分ゴト化されないと、顧客には響かない。

そうした中で注目されているのが、「コミュニティマーケティング」である。それは、「顧客が顧客を開拓する仕組み」である。素晴らしい製品・サービスには、ファンがつく。ファンの熱い想いはユーザーコミュニティを作り、ユーザーコミュニティはユーザー自身の力でユーザーを拡大していく。それをマーケティングに活用するのが、コミュニティマーケティングであると理解した。

ITの分野では、こうしたユーザーコミュニティがとても重要で、パソコン通信の時代から、オンラインのユーザーコミュニティが作られ、掲示板(BBS)などで、ユーザー自身によるユーザーサポートがなされていた。鞍掛も楽器メーカー在職中は、デスクトップミュージックのユーザーサポートと顧客の声の収集のために、NiftyServeのフォーラム(BBS)を利用していたものだ。

ユーザーコミュニティの価値は「対象顧客に響くコンテンツ」+「対象顧客への拡散力」である。ユーザーコミュニティでは、コンテンツは自分ゴト化されることで、自ら自分たちで作りだしていく。「対象顧客に響くコンテンツは顧客が自発的に生成するコンテンツなのだ。それはまさにユーザーの声である。そしてその声は自分ゴト化されているがゆえに、他のユーザーが高く評価して、拡散されていく。

コンテンツには、「発見系コンテンツ」と、「確認系コンテンツ」の2種類があるという。企業からの新製品情報や新機能情報は、発見系コンテンツ。しかし重要なのは、それだけではなく、「この機能はこういう風に使うんですよね」といった、確認系コンテンツ。小島氏がいうには、発見系と確認系は2:8だという。確認系は安心感を与え、新規顧客の背中を押す。そして、この確認系コンテンツこそ、顧客自身つくるコンテンツであり、企業側からはなかなか出しにくいコンテンツなのだ。そして、顧客自身が作る役に立つコンテンツはコンテンツを通して、対象顧客へ拡散していく。まさに、「Sell Through the Community」なのである。

では、このコミュニティマーケティングを進めるにはどうしたら良いか?それには、3つの要素が必要になる。
1)ファン
2)センター(センサー)
3)期待値コントロール

ファンは必須であるが、ファンの中でも、他のコミュニティメンバーから一目置かれ、良さを人に伝えられる人、周りの人に気配りできる人が「コミュニティリーダー」として必要になる。小島氏は、この人をボーリングに例えて、「1番ピン」の人と呼んでいた。ボーリングはピンが横に並んでいたら、1つ1つ倒さなければならない。ピンが三角形に並んでいるから、1番ピンをうまく倒せば、ストライクが取れる。そのような影響力をもった人がファンの中に必要なのだ。

次にコミュニティを運営する企業側には、コミュニティのセンターにいて、コミュニティの状況をセンサーする「コミュニティマネジャー」が必須だ。コミュニティマネジャーは原則としてコミュニティには一人が理想。複数居るとやはり言うことがばらけてしまったり、ユーザーの窓口としても一人の方がわかりやすい。向いている人は、「人から好かれるタイプの人」「マーケティングのセンスがある人」「会社内で評価されていて、社内で上下を問わずコミュニケーションがきちんとできる人」だそうだ。これはなかなか難物だ。逆に言うと、これからはコミュニティマネジャーの育成に可能性が高いということだ。

期待値コントロールとは、特に経営陣や社内からの過剰な期待につぶされないようにコントロールをするということ。これもコミュニティマネジャーの仕事になる。コミュニティマーケティングは即効性はない。コミュニティをじっくり育てることで、成果がでてくる。だから時間がかかる。経営陣や営業ががまんできるように、適時、説明と可能性を報告を繰り返し、安心させなければならない。

コミュニティを盛り上げるためには、3つの原則があると小島氏はいう。それは「オフラインファースト」「コンテキストファースト」「アウトプットファースト」の原則。コミュニティはもちろんオンラインでも良いのだが、やはりオフラインイベント等で実際に会うことが重要。これは鞍掛も痛感するところ。そして、このオフラインイベントで、1番ピンになりそうな人を見つけるのだという。話のうまい人のところには、輪ができる。そしてその輪ができている人を観察して、自分一人でしゃべり続けているのではなく、その人の周りの人に目がまわって、気配りができるような人が1番ピンになる人だそうだ。

コンテキストファーストとは興味の粒度が参加者にあっているか、集まる人達にとって意義ある場所になっているか?を常に考えるということだ。粒度が合わなくなったら、別のコミュニティをたちあげた方がうまくいく。

アウトプットファーストはコミュニティメンバーを発信側にすること。コミュニティの中で発信することで他のメンバーから認識されると自分ゴト化できる。そのために、ソーシャルメディア用のハッシュタグを決めたり、オフラインイベント中もハッシュタグを付けた投稿を促したり、個人のブログなどをフォローアップしたりする。

ネット、スマートフォン、ソーシャルメディアの普及は、マーケティングを大きく変えている。従来のマスマーケティングによる認知から、興味を引き出し、行動へ移す流れは難しくなってきている。どれだけ「自分ゴト化」できるかがますます重要になっている。その考え方はくらラボが提案する企業やブランドのファンを作って、売上向上を目指す「ファンベースマーケティング」も同じであるが、ただファンを作ることから、コミュニティを自走化させようとする「コミュニティマーケティング」は更に進んだ考え方とも言えよう。

●CMC_Meetup — コミュニティマーケティングのためのコミュニティ、始めました。
(小島英揮氏のブログ)
http://stilldayone.hatenablog.jp/entry/2016/11/27/CMC_Meetup

●AWSだった小島英揮さん、パラレルキャリアの道をただいま爆走中
(アスキーチームリーダーズ)
2017年03月10日 10時00分更新
http://ascii.jp/elem/000/001/448/1448809/